Forthcoming 2022/23 Mars (3)
2022年 3月・4月の観測ポイント
村上 昌己
CMO #513 (
三月から四月にかけては火星は「いて座」から進み「やぎ座」を通過して「みずがめ座」へと順行を続ける。視直径(δ)は三月下旬には5秒角を越えて、四月末にはδ=5.7秒角に達する。視赤緯も-21°台から-8°台と高くなり、午前2時台には出てくるようになってきて、北半球でもだんだんと観測条件は良くなってくる。
季節(λ)はλ=182°~219°Lsと進んで、火星南半球の春分(λ=180°Ls)を過ぎたところの観測となる。この期間の火星は下図のように傾き(φ:中央緯度)が大きく南を向いてきて、縮小が始まっている南極冠の観測がポイントの一つである。図には南極冠の雪線が示されていて、三月初めの60°Sから五月初めには67°Sに後退する様子が描かれている。南半球の秋分を過ぎると南極は白夜となり太陽光線に照らされ続けることとなり、南極地の極冠の融解が早まり、極冠内部に陰りが出てくる。
南極冠内部の陰翳に関しては、下記の記事を参考にされたい。
パルワ・デプレッシオの出現 [Forthcoming 2005 Mars (7) ] CMO #304 (25 April 2005)
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/2005Coming_7j.htm
CMO/ISMO 2020 観測レポート#06 「2020年六月の火星観測報告」CMO #495 (10 July 2020)
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/495/2020repo_06.htm
もう一つのポイントは、北半球発現のダスト・イベントの季節が始まっている事である。この期間に発生した例を挙げると、
183°Ls 2001年6月 ヘスペリアに発生。全球的に拡がる。
184°Ls 2018年5月 マレ・アキダリウム東岸に発生、全球的に拡がる。
209°Ls 2014年10月 クサンテからルナエ・ラクス付近に局地的な黄塵が発生。
214°Ls 2003年7月 クサンテ付近で発生。ヘッラスからノアキスにかけて拡がる。
局地的で収まった。
等であり、北半球の黄雲発生の1回目のピーク(λ=210°~230°Ls)の期間に入っている。クリュセからルナエ・ラクスにかけての範囲に注意を払いたい。
2018年の時には、北半球発現の黄雲が全球的に拡がって、ほとんど暗色模様が見えなくなったのは記憶に新しい。
この期間に関しての記述は、下記の記事を参照されたい。
北の秋分以後のクサンテからルナエ・ラクス近傍での擾亂
[ISMO 2013/14 Mars Note (#11)] CMO/ISMO #438
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/438/ISMO_Note_2014_11.htm