CMO/ISMO 2022/23 観測レポート#02

2022年三月の火星観測報告

 (λ=182°Ls ~λ=200°Ls)

村上 昌己

CMO #514 (10 April 2022)


・・・・・・ 今期二回目のレポートは、三月末までの『火星通信』に寄せられた画像に拠るものである。

フォスター(CFs)氏がルーチン観測の対象として、晴天の日には欠かさず撮影をしているが、今月は天候にそれほど恵まれなかったようである。アメリカからは、ロッゾリーナ(MRs)氏が視直径の小さい内から眼視観測をスタートさせている。

この期間には火星は明け方の「やぎ座」で金星と並んで順行を続けていた。最も近付いたのは12日のことであった。金星は下旬には土星とも近付いて、最接近は29日のことであった。次いで火星と土星は44日に角距離19’の近接した接近となり、追い越していった。赤緯は20°Sを越えて北半球でも高度が上がってきたが、日の出の時刻も早くなってきて、観測条件はなかなか良くならない。

 


 

この期間の火星は、視直径(δ) δ=4.7”5.2”に少し大きくなった。中央緯度の傾き(φ)14°Sから21°Sに増加して、融解の始まっている南極冠がこちらを向いている。位相角(ι)28°から33°に増加して、夕方の欠けが目立つようになっている。季節(λ) は、南半球の春分過ぎの λ=182°Lsからλ=200°Lsまで進んだ。同じような季節の前回2020年接近時の様子は、以下のURLから参照できる。

https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/493/2020repo_04.htm  CMO #493 (10 May 2020)

https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/494/2020repo_05.htm  CMO #494 (10 June 2020)

 

・・・・・・ 三月の火星面の様子

フォスター氏から報告された画像から、火星面の様子を日付順に並べた画像をご覧いただく。 S Meridiani(シヌスメリディアニ)からSolis L(ソリス・ラクス)まで、ほぼ一廻りが捉えられている。ご本人も嘆いているように、明縁の処理のまずい画像もあるが、少し視直径の増加してきたこともあり、だいぶ細かく明暗が捉えられている。

春分を過ぎた南極冠は、南極中央から融解が進んでいる時期で周辺部より暗くなっている。ダーフリンジもはっきりしてきて、南極冠の雪線緯度は60°S付近にあり今後も徐々に後退してゆく。周辺部には今後目立ってくる、M Argenteus (モンス・アルゲンテウス, 030°W)Thyles M (チュレス・モンス, 150°W)Novus M (ノウォス・モンス, 325°W)等か明班として捉えられている。後半には南極冠内部にダストの色調が感じられる日も出ている。北縁の北極雲の様子は傾きが南向きになってきたこともあり北縁の白い明るさだけになっている。

北半球の高山は午後の山岳雲のかかる季節は終わって、オリュムプス・モンス(Olympus M)は暗色のリングに取り巻かれている。赤道帯の夕靄はまだ残っているようで、南半球のアルシア・モンス(Arsia M)には、まだ午後には山岳雲が懸かって青白く見えている。

 


上の画像で13 MarchHellas(ヘッラス)南西部の明班は、南極冠エッジのダスト活動の様で、14日にも活発だったようで、Hellespontus (ヘッレスポントゥス)が濃化している。同様な位置に明班が26 Apr 2020 (λ=190°Ls)に、ジャスティス(MJs)氏や熊森(Km)氏より捉えられていて、季節的な現象のようである。上記CMO #494の観測レポートに記事がある。

 

MRO MARCI Weekly Weather Reports の破れ提灯動画は、再び停止していて、202226日以降の画像はアップされていない。

 

 

 

・・・・・・ 三月の観測報告

  観測報告は、フォスター氏からは12観測であった。ロゾリーナ氏の眼視観測でも、暗色模様が捉えられるようになっているようである。画像はリストのリンクから辿れる。

 

      クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリ

   FOSTER, Clyde (CFs) Centurion, SOUTH AFRICA

      12 Sets of RGB + 12 IR Images  (1, 4, 7, 13, 14, 20, 21, 24, 27~29, 31 March 2022)

                                          36cm SCT with an ASI 290MM

         https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2022/index_CFs.html

 

      ミカエル・ロゾリー (MRs) ウエスト・バージニア、アメリカ合衆国

   ROSOLINA, Michael (MRs) Friars Hill, WV, the USA

      1 Drawing (18 March 2022)  35cm SCT, 326×

         https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2022/index_MRs.html

 

 

・・・・・・ 五月の観測ポイント

 五月になると視直径は6秒角に達して一回り大きくなる。欠けは大きくなり北極方向角も大きくなるが、南極冠がまだ大きく見えているので南北線は取りやすいと思われる。雪線は下旬には70°Sを越えてくるがまだ偏心の時期ではない。辺縁の明部が目立つようになってくる。

五月も北半球の黄雲発生の一回目のピーク(λ=210°~230°Ls)の期間に入っている。Chryse (クリュセ)からLunae L(ルナエ・ラクス)にかけての範囲に注意を払いたい。

 


 

  視直径が少し大きい前接近の同時期の様子は、以下のリンクから参照できる。

https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/495/2020repo_06.htm CMO #495 (10 July 2020)

 


 

 五月には、火星は「みずがめ座」から「うお座」へとはいり、月末には赤緯が北になる。五月後半には海王星・木星と接近する。金星も先んじてこの両星を次のように追い抜いてゆく。

 427日 19:08 UTC  金星・海王星  000

 430日 18:42 UTC  金星・木星      015

 517日 23:07 UTC  火星・海王星  034

 529日 00:04 UTC  火星・木星      038


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