アンタレス研究所・訪問
§14:年越しのTwin Peaks●火星の話題の大黄雲は峠を越したようだが、黑點は未だ熱い年越しである。●1999年七月に黑點相対数Rのピーク(最高R=300前後)を迎えた太陽表面は、その後大型Flareを度々放出させながらも、2001年に入って安定した動向を見せていた。時折Rが200を越える月もあったが、150前後に落ち着き、相対数主体の太陽觀測者の中では第23期極大期のピークは過ぎたなどという話が交されるようになった。このピークのR最高値は前回第22周期に比べてかなり小さく、記録を見ると過去六回の周期の中でも最も小さいR値である。「極大期といってもたいしたことはありませんね」という相対数觀測者は多かった。●しかし、2001年に入ってからの現象を振り返ってみると、肉眼レベルの巨大黑點の出現が依然として多かった事に気づく。出現が無かったと思われるのは二月と七月だけである。その二月や七月にも、短時間で急激な変化を見せる黑點の出現が目に付き、太陽表面の活動はめまぐるしい様相を示していたのである。●その頃活動周期の替わり目を示す短命の高緯度黑點が出現して、本当にこのまま下降線をたどるのかとも思われたが、九月に入って再びRが300に跳ね上がった。●平磯(通信総合研究所 電磁波計測部門 太陽地球環境情報サービス)から頻繁に太陽地球環境情報が送られて来るようになり、SoHO/LASCOの電網速報畫像には、CME現象が立て続けに起きていた。大規模な爆発現象がひっきりなしに起きているのである。その中でもXタイプという最大規模のフレアが引き起こすプロトンフラックスが地磁気嵐を引き起こし、電波障害の警告や被害の情報が頻繁になった。各旅行社が企画するオーロラツアーは大繁盛となった(オーロラ極大は周期ピークより数年遅れることが判っているというのに)。●十月以降になるとひと月の半分も大型の肉眼黑點が出現し、活発な様相のまま年末を迎えた。Mk氏は「南北とも10゜以下の低緯度に出現する群が増えていて、極大期後半の様相になって来ている」と報告している。低緯度黑點は最盛期を表す。また、通常太陽の南北半球のどちらかで活動が活発な時はどちらかは静穏であることが多いのだが、南北均等に間断無く黑點やFlareの出現が見られることは、活動が非常に活発であることを物語っている。●過去のデータで第22周期の極大を調べてみると1989年六月に一度ピークが来て、その直後に急降下、その後緩やかな増減を見せながら減少に向かうものと思われたが、1990年の八月にそのピークを上回る増加現象が起きている。平均相対数増減グラフを見ると鬼の角のような見事なTwin Peaksを形成している。その後1992年に急降下するまで徐々に下降していった。今回の第23周期も2000年で極大に達したかと思われたが、どうもここへ来て二度目のピークを迎えているのではないかと思われる。●これまでのピーク時にはまだ存在しなかった太陽觀測衛星の活躍により、黑點の増減だけでは見えなかった太陽活動の何かが姿を現すかもしれない、絶好のチャンスの到来である。
(Ts)
・・・・・『火星通信』#255
(10 January 2002) p3220