Forthcoming 2018 Mars (#08)

2018年大接近の火星 (III)

村上 昌己

CMO/ISMO #470 (25 June 2018)


6月になって接近中の火星は、「やぎ座」で夜半過ぎの南の空に赤々と輝いている。28日には「留」となり逆行に移り、いよいよ接近してくる。今回の最接近は、メーウスの接近表では、731(λ=221°Ls)07h51m(TD)のことで、日本では17時頃で、火星の出は19時頃、南中は2330分頃となる。最大視直径δは、24.33秒角に達する。

530(λ=184°Ls)に北半球のマレ・アキダリウム東岸で発生した黄塵現象は、6月始めには活動範囲を大きく拡げて、6月半ばには、ほぼ全面にダストが拡がって全球的な黄雲現象となった。6月末には、高山の山頂は暗点に見えるが、他の暗色模様は常態と全く変わった見え方になっている。

火星南半球の春分(λ=180°Ls)直後に発生の黄雲は、20016(λ=184°Ls)に前例があり、発生場所は南半球と異なるが、同じλで発生している。この時には暗色模様が復活するには4ヶ月ほどかかり、火星面がダストで見え難い状態が継続した。今後の稠密な観測と報告をお願いしたい。

 

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  CMO#464(II)に引き続き、最接近後の9月からの観測対象について記述する。全球的な黄雲の発生のために火星の季節変化は大きく狂わされると考えられ、南極冠の縮小なども違ってくると思われる。以下の説明は、黄雲発生のない火星面の季節変化であることに留意されたい。黄雲発生時には、火星の季節がどの様に狂わされるかを見極める絶好の機会でもある。

 


4) 接近後期 

 この期間には、6月発生の黄雲もだいぶ落ち着いてきているのではないかと考えられる。平常であれば、この季節が南半球の大黄雲の発生期にあり、引き続き監視が重要な時である。クリュセあたりの局所黄塵の発生もある。北半球起源のものもあるとされる。南極冠の縮小も進み、Ω=030°W方向中心に融け残りが偏芯してゆく。残留南極冠もこの期間末には消滅する。南半球の夏至 (270°Ls) になるのが1015日である。

 朝のターミネーターが見えるこの期間には、朝方の凸現象がエリダニア付近に観測されることがあり注意が必要である。太陽活動との関連も指摘されているが、最近の黒点活動は極小期に入っていて、大規模なCMEの発生も少なくなっている。

  この期間の観測は、次回202010月の接近 (最大視直径δ=22.56") の予習として重要で、927(λ=258°Ls, δ=16.4")までが、次回接近より大きな視直径で観測が出来る。 

 


この期間の火星面の様子

Nov 06の図からは、南極冠は偏芯して融解してゆくために雪線は示していない。

下記の参考文献を参照されたい。

 

20189 (1 : λ=241°Ls, δ=20.9", φ=10°S, ι=28°) には「やぎ座」で、少しずつ赤緯を上げていくものの、まだ北半球での南中高度は低い。6日には視直径は20"を下回ってしまう。位相角も大きくなり朝方の欠けが目立つようになってくる。

 

201810 (1 : λ=260°Ls, δ=15.8", φ=14°S, ι=40°) には「やぎ座」で順行を続けて赤緯は16°S台にまで回復している。7日には視直径は15"を下回る。15日に南半球の夏至 (λ=270°Ls) となる。ノウォス・モンスの南極冠との分離はλ=260°Ls 頃におきる。消滅はλ=270°Ls 過ぎになる。

 

201811 (1 : λ=280°Ls, δ=11.9", φ=20°S, ι=44°) にもまだ「やぎ座」にあり、順行を続けて10日には「みずがめ座」に入る。28日に「東矩」になるが日没が早まり南中までは1時間ほど時間がある。冬至過ぎの北半球では北極雲の活動が活発になるが、傾きがまだ南に大きい。位相角も最大となり欠けが大きく陰りに入っていて北辺の確認は難しいだろう。16日には、月齢8.5の月に隠される火星食が起きるが見えるのは南極大陸方面で、わが国からは見えない。

 

201812 (1 : λ=298°Ls, δ=9.3", φ=25°S, ι=44°) には「みずがめ座」を進み赤緯は10°Sを上回ってくる。視直径が8"を切るのは22日になる。8日には海王星の北2.1'を通過するが、2017年ほどは近づかない。月末には火星の南中は地方時17時で日没時と同時になっている。東京の日没時高度54°で、まだ観測は続けられる。火星の没は23時頃となる。

 


2018年接近後半の星座間の動き

 

5) 観測後期    20191月〜20195月末日 (λ=317°Lsλ=033°Ls)

 視直径は8"を下回って小さくなるが、夕方の西空で赤緯を上げて行き、北半球では日没後の南から南西の空に沈み残っているようになる。秋の星座の中で火星だけが夕空に目立つ。南半球の大黄雲の発生期は終わりになっているが、エオス、クリュセあたりの局所黄塵は2017年にもこの時期に観測されていて、注意が必要である。この期間の322日に南半球の秋分 (000°Ls) になる。

下図には、視直径は小さくなるが、予想される北極冠の様子をFeb14の図から示している。

 


この期間の火星面の様子

 

20191 (1 : λ=316°Ls, δ=7.4", φ=26°S, ι=42°) には「うお座」にあって、1日には赤緯は北へ戻る。

 

20192 (1 : λ=334°Ls, δ=6.1", φ=24°S, ι=38°) には「うお座」を順行している。14日に天王星の北.1.1°を通過する (δ=5.7", +1.0)

 

20193 (1 : λ=348°Ls, δ=5.3", φ=19°S, ι=34°) には「おひつじ座」に入り、日没後の南西の空にある。南半球の秋分(000°Ls)に達するのは23日となる (δ= 4.8", φ=14°S)。月末には火星の南中は地方時15時。東京の日没時高度は48°、没は22時頃と観測時間はだんだん少なくなっていく。

 

20194 (1 : λ=004°Ls, δ=4.6", φ=11°S, ι=29°) には「おうし座」にあって、3日にスバルの南3.5°を通過してゆく (δ=4.7", +1.4)。視直径は4秒角台になり、観測期も終焉近くなっている。

 

20195 (1 : λ=019°Ls, δ=4.2", φ=2°S, ι=24°) には「おうし座」から「ふたご座」へ順行して、19日には散開星団 M35の中を通過する (δ=4.0", +1.7)。月末には火星の南中は地方時13時。東京での日没時高度25°、没は21時頃となる。

 

201961 (λ=033°Ls, δ=3.9", φ=7°N, ι=18°) には「ふたご座」にあって、視直径は4秒角を下回り2018年接近期の観測は終わりを告げる。

 

  この後も火星は夕空で太陽に近づいて行って、201992日に「合」となる。次回の接近は、2020年秋に「うお座」で起きて、メーウスの接近表に拠れば、「対衝」が、20201013(λ=296°Ls), 23h20m TD で、最接近は、一週間前の2020106(λ=291°Ls), 14h19m TDであり、最接近距離は0.415AU, 視直径は22.56"にまで大きくなり、今接近とペアの大接近である。南半球の夏至(λ=270°Ls)を挟んでの季節の観測となり、傾きも南向きで、今回接近の後半同様に火星の南半球の観測に適している。

 

 

*ピカリ現象の可能性

 2018年接近での状況をAlmanac2017/18 で調べるとDe=Ds となるのは、

 1) 2017 Nov 01   De=Ds=24.9°N, δ=3.9"

  2) 2018 Nov 19   De=Ds=23.3°S, δ=10.1"

2 ある。1)は視直径が小さく除外するとして、2)の場合でもDe=Ds=23.3°Sと南に緯度が高くエドムでの現象は起きないのではないかと思われる。しかし、1958年にはソリス・ラクス周辺で光点が観測されている例もあり注意が必要である。

 

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この期間の観測対象関連論文

 

黄 雲 現 象

 

2001年南半球黄雲に関して

2001年観測ノート、インデックスページ

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn0/01NoteIndex.htm

 

 

2001 Mars CMO Note (2) CMO#256 黄塵は早暁に作られ、昼は上昇のみ

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn0/01Note02j/index.htm

 

CMO 2005 Mars Note (7) CMO#324 奇蹟的だった十月18GMT

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn3/CMO324.pdf

(Ser2-p0478 和文)

 

黄雲畫像のパッチワークを排す

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/399/Mn_399.htm

 

Forthcoming 2007/2008 Mars (7) 黄雲の季節來たる CMO #331

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/2007Coming_7j.htm

 

Forthcoming 2007/2008 Mars (9) 1956年の輝けるデウカリオン黄雲 CMO #333

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/2007Coming_9j.htm

 

 

 

南極冠とヘッラスに関して

 

秋冬の南極冠 CMO#353 p1021

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn0/CMO353.pdf

 

2001 年の火星(6) 南極冠の生成と北半球の夏

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/coming2001/0106/06j.html

 

Great 2003 Mars Coming (7) 南極冠の内部の觀察 CMO#268

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomk/coming2003/07j.html

 

Forthcoming 2005 Mars (7) パルワ・デプレッシオの出現

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/2005Coming_7j.htm

 

2001年の火星 (7)   南極冠は何時偏芯するか 

http://www.mars.dti.ne.jp/~cmo/coming2001/0107/07j.html

 

Forthcoming 2005 Mars (11) 經緯度圖で南極冠の偏芯を見る(λ=235°Ls, 250°Ls, 270°Ls)

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/2005Coming_11.htm

 

CMO 2005 Mars Note (10) ノウス・モンスの殘照 CMO #327

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn3/CMO327.pdf

 

 

 

朝縁の突出現象

 

CMO 2003 Great Mars Report (18) CMO #283  (25 Nov 2003 )

2003年十一月前半(1 Nov~15 Nov)の火星面觀測

: アウソニア-ヘッラスの朝のオーロラ的凸現象

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/283OAAj/index.htm

 

ISMO 2011/2012 Mars Note #02 2012年の朝方凸現象を2003年のそれと比較する 

CMO/ISMO #400

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/400/ISMO_Note_2011_02.htm

 

HSTで観測された火星の欠け際の突出現象       CMO/ISMO #400

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/400/CPl_400.htm

 

 

 

ピカリ現象

 

2001年の火星(10) 火星面がピカるとき

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/coming2001/0110/10j.html

 

2016年のエドムでのピカリ現象の可能性について ( I )

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/447/Mk_447.htm

 

2016年のエドムでのピカリ現象の可能性について ( II )

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/452/Mk_452.htm

 

 

 

観測一般

 

眞の古典的觀測を求めて CMO/ISMO #408

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/408/Mn_408.htm

 

40分毎観測のすすめ  CMO/ISMO #387

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/387/Mo_Mk_387.htm

 

40分毎觀測の實際 CMO/ISMO #385  2009/2010 CMO火星觀測ノート (13)

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/385/2009_2010Note_13.htm

 

位相角を使うこと(暦表の使い方)  CMO/ISMO #392

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/M_392.htm

 

火星観測のためのISMOの最重要提言 CMO/ISMO #420

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/420/CPl_420.htm

 

火星観測を暫し沈思黙考する CMO/ISMO #418

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/418/DPk_418.htm

 

ローカリズムかユニヴァーサリズムか  CMO/ISMO #417

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/417/Mn_417.htm

 

せいぜい機率5%  CMO/ISMO #412

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/412/Mn_412.htm

 

火星の動畫の本來あるべき姿 CMO/ISMO #401

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/401/Mn_401.htm

 

 

 

以前の接近時の記事

 

2003年の火星大接近について 

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn3/nihongo/2003_1.htm

 

2003年の火星大接近 天界記事

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn3/nihongo/2003_2.htm

 

2003年火星大接近観測レポート 目次ページ

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmohk/2003repo/index03j.html

 

Forthcoming 2016 Mars (#02) 2016年の火星接近状況 1  CMO/ISMO #439

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/439/439_FC2016_02.htm

 

Forthcoming 2016 Mars (#06) 2016年の火星接近状況 2  CMO/ISMO #446

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/442/442_FC2016_06.htm

 


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