ELCAS・最先端科学の体験型学習講座(京都大学理学部)未来の科学者養成講座

ELCAS・最先端科学の体験型学習講座(京都大学理学部)未来の科学者養成講座

体験アーカイブ・2009年5月16日

体験学習コースの受講模様を分野別に掲載しております。

数学

チューター:木村嘉之(博士課程 3回生),長尾有晃(博士課程 3回生)

実施場所:理学研究科3号館 109号室

平方数の和で表わせる素数についてのフェルマーの定理の、ヒース=ブラウンによる三つの対合を用いる証明と、自然対数の底が無理数であることの証明をそれぞれ別の高校生に発表させた。輪読している本『天書の証明』の第4章の後半と第6章の最初の部分に相当する。

受講したELCASメンバーの感想文

  • 数学独特の言葉とか、記号とかその証明で定義された集合とか、もうちょっと説明しながらやってほしいなぁーって思った。
  • 「素因数分解したときに、4m+3の形の素因数の指数が偶数なら平方の和で表わせる」つまり44は無理で、45=3^2+6^2とできるということ。やっぱり目に見える形で結果が表われると気持ちがいい。
  • 対合がとらえにくかったです。与えられている命題は、短かくて分かりやすいのに、証明はややこしいなぁと思いました。eが無理数の証明は学校でやるのに近くて身近でした。
  • 説明していて、途中まで良く分からなかったことが、最後になって分かって良かったです。一つ一つはそこそこ簡単なのに全体を通して見てみると難しくて大変でした。
  • いつも、難しいですが、今日はわりと分かりやすかったです。結構、数論の分野を気に入りました。発表は緊張するけど、今回はちゃんと予習しているから大丈夫かも。

物理

チューター:佐田優太(修士課程2回生),酒向正己(修士課程2回生)

実施場所:理学研究科 5号館 511号室

本日より宇宙線(ミューオン)の寿命測定の実験を開始した。

実験装置(シンチレータとアルミ板)をどのように配置すればいいかを学生に考えてもらい、配置した。これから2週間データを取り続ける予定だったが、改善しなければいけない点が見つかり、データを取り始めるまでに至らなかった。学生たちにも実験の大変さを感じてもらえたと思う。

実験装置(シンチレータとアルミ板)の配置のための土台を製作している セッティング完成
シンチレータに電圧をかけて信号をチェックしている

受講したELCASメンバーの感想文

  • 今日はシンチレータ等のセッティングをしました。しかしなかなかいいデータがとれずに残念でした。また次回頑張りたいと思います。
  • 今日は実験の用意をしたのですが、なかなか作動しないシンチレータがあって、実質失敗でした。実験に失敗はつきものだということを身近に感じました。
  • 今日は、本格的に実験を行いました。自分で装置をつくるのは大変だなーと思いました。次も頑張りたいです。
  • 前回からの実験の続きをした。ミューオンの寿命を測定するまではまだ時間がかかりそうだが、少しずつ成功率を上げていきたいと思う。
 

天文

長田哲也教授

チューター:禅野孝広,義川達人(修士課程1回生)

実施場所:理学部4号館5階会議室

屈折望遠鏡(ケプラー式とガリレイ式)及び観測機器(特に分光器)の原理に関する簡単な説明を行い、その後、実際に分光器を自作した。分光器に使用したものは、水道パイプ(筒の代わり)、凸レンズ2枚、CD片(回折格子の代わり)、トレーシングペーパー(分光された光を表示)、黒紙。

余分な光の影響を抑えるため、黒い紙を必要な場所に貼り付ける。 自作分光器完成間近。中央の黒い部分が2つの円筒の継ぎ目。

完成した分光器が正しく動作するかを卓上灯を用いて検査。正しく動作していれば、手前のパイプ内に設置したトレーシングペーパーに分光された虹状の光が映し出される。

受講したELCASメンバーの感想文

  • 今回は「ちょっと本格的な分光器」を作るというわけで作ったのだが、結局1人だけ完成できず、残念だった。ただ、作るときの過程でどう工夫するかを考えていくのは楽しかった。
  • 初めて実際にちょっと本格的な分光器を作ってみて、分光器の仕組みがよくわかった。CDの溝のところは同心円状についているので、つける向きによって見え方が変わるというのが面白かった。
  • 今日は、ちょっと本格的な分光器を作りました。特に方向の違いを場所の違いにして、色の像を作り出すのは、おもしろかったです。また、実際に自分の手を動かして作業することで、望遠鏡や分光器の仕組みがよくわかりました。
  • 今回は理論としては簡単なものだったけど、工作には少し時間がかかった。前回作った分光器よりは精度は良さそうだけど、比較的多くの光量を必要としているのが難点だった。次回の発展が、先生曰く「難しい」らしいので、楽しみです。

生物

久保田洋准教授

チューター:武藤耕平(博士課程2回生)
実施場所:理学部2号館232号室

細胞運動についての思考力を養う

まず、細胞運動及び細胞骨格について概説し、原生動物の運動を観察した。次に、一般的な精子の運動を概説し、アフリカツメガエルの精子の運動を観察した。そして、モリアオガエルの精子を走査型電子顕微鏡で観察し、この精子がどのように動くのかを考察してもらった。その後、実際に精子の運動を観察し、運動のメカニズムを考察してもらった。最後にモリアオガエル精子を透過型電子顕微鏡で観察し、この精子の微細構造と運動機構についての理解を深めた。

 

透過型電子顕微鏡でモリアオガエル精子を観察 走査型電子顕微鏡でモリアオガエル精子を観察
モリアオガエル

       

受講したELCASメンバーの感想文

  • 今日は、細胞の運動について、話すことから始まり、どのような仕組みで動くのか、ということを詳しく教えていただきました。そして、今回のメイン、モリアオガエルの精子は、私が認識しているものとはずいぶん形状が違い、驚きました。精子という小さな単位でさえ、環境に対応し、生き残るために進化しているということに、生物のすごさを感じました。また、どのようにして進むのか、またどのようにして巻いたりするのか、ということを本当に小さい単位のことで、考えながら学び、とても楽しかったです。まだわかっていないことがあるそうなので、それが解明されるのが楽しみです。

  • 今日は、精子の運動のメカニズムについて勉強し、その後で、新たに解明された、モリアオガエルの精子の運動について勉強しました。微小管のダイニンの活性が切り替わることで、屈曲がおこるといった仕組みは知らなかったので驚きました。が、それよりも、モリアオガエルの精子の尾が自分の中の精子のイメージと違って、太くてむっちゃ長いことの方が驚きでした。

  • 今日の講座では、精子の動きについて勉強しました。講座の中で一番印象に残っていることは、同じ“精子”というものでも、それぞれいる環境によって、つくりや形まで違うってことがわかったことです。高校では、“精子は動ける”ということしか習わないけど、今回の講座で、精子がどんな構造をもって、どうやって動いているのか少し理解することができました。